コラム 新おおつか発
負担増で透析患者ピンチ
政府・与党「医療制度改革大綱」発表
厚生労働省は、10月19日「医療制度構造改革試案」を発表しました。
それによりますと、国民皆保険制度を維持し、国民の生命と健康を確保しながら医療費の伸びを如何に負担可能なものに抑制していくかを検討したもので、診療報酬、医療保険制度など全般の改革を行なうものであります。
この試案をべースとして、政府・与党医療改革協議会は、12月1日「医療制度改革大綱」を決定いたしました。これを今年の通常国会に、「医療制度改革関連法案」として提出し、最終決定することが、予定されております。
この「大綱」の概要は、次の通りです。
T 新たな医療保険制度
(1)高齢者医療制度
75歳以上の後期高齢者は、現在加入している保険から、08年度に創設される「後期高齢者医療制度」に加入します。
前期高齢者(65〜74歳)は、従来の保険加入を継続いたします。
@後期高齢者医療制度
保険料徴収は市町村が行い、財政運営は、都道府県単位で全市町村が加入する広域連合が行ないます。財源は患者負担を除き、公費5割、現役世帯からの支援4割、高齢者の保険料1割で賄います。ただし、現役並みの所得者の窓口負担は3割、一般は1割となります。
A前期高齢者医療制度
窓口負担は、70歳未満は3割負担。70〜74歳は2割負担。(但し現役並みの所得者は3割負担)70〜74歳までの低所得者の自己負担限度額は据え置きとなります。
(2)保険者の再編・統合
@国民健康保険
市町村の運営から、都道府県単位で全市町村が加入する広域連合が運営主体に変わります。
A政府管掌健康保険
国と切り離した全国単位の公法人を保険者として設立し、都道府県単位の財政運営を基本とします。
B健康保険組合
規制緩和などで再編・統合を進めます。
U 医療費適正化の総合的推進
(1)食費・居住費の負担
療養病床に入院する高齢者は、食費・居住費を負担することになります。
(2)高額療養費の自己負担
高額療養費の自己負担限度額は、賞与を含む報酬総額に見合った水準となるよう引き上げられます。
●人工透析患者のうち、月収53万以上の者は、自己負担限度額を1万円から2万円に、引き上げられます。
V 診療報酬などの見直し
(1)診療報酬改定
06年度の診療報酬の改定は、物価と経済動向、保険財政の状況などを踏まえ「引き下げの方向で措置する」としており、12月末ごろまでに具体的な数字が決定されると思われます。
(2)薬剤など
薬価や保険医療材料価格は、市場実勢価格を踏まえて、引き下げられます。
以上が「大綱」の概要ですが、今回は透析患者の「長期高額療養費」の自己負担について名指しで負担増が挙げられました。今まで20年以上なかったことです。このほか高齢者の負担増を始め、改定となる各項目は直接、間接に影響を与えることになりますから、透析患者の生活は、ますます苦しくなることが予想されます。
今まで「改善」を重ねてきた透析療養の環境が、これを境に「改悪」の方向へ傾いていくことだけは、避けなければならないと思います。(藤原)
東腎協No.161 2006年1月25日
最終更新日:2006年4月27日
作成:K.Atari