東腎協結成25周年記念講演会

(司会) 堀 和正東腎協副会長

写真:堀和正東腎協副会長

 皆さまのご協力のお陰をもちまして、東腎協も25周年を迎えることができました。厚く御礼申し上げます。 我々が現在、質の高い医療を受けられるのも、25年の長きにわたり多くの会員、家族の皆さんが積み重ねてきた努力の賜であることはいうまでもありません。この点をお考えいただきながら、25年の節目,に当たり、物故者の皆さんに感謝の気持ちを捧ながら、謹んでご冥福を祈りたいと思います。
 それでは、ただいまより東腎協結成25周年記念講演会を開催いたします。まず、東腎協の糸賀会長がご挨拶を申し上げます。

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(主催者挨拶)東腎協 糸賀久夫会長

 皆さん、おはようございます日曜日にもかかわらず、朝早くから多数ご出席いただきましてありがとうございます。
 ただいま、司会者が申し上げましたように、東腎協は今年で25周年を迎えました。会員、並びにご家族の皆さんのご協力によりまして、こここまで発展することが出来ましたことを大変うれしく思っています。 この間、腎疾患対策の推進に、東京都衛生局から多大のお力添えを得ておりますが、本日は、来賓として、技監の林さんがお見えになっておりますので、御礼を申し上げ、後ほどご挨拶をいただきたいと思います。

 今日は、25周年の記念行事としまして、「災害時における透析医療の確保について」というテーマで、東京都衛生局医療福祉部特殊疾病対策課長の東海林さんに講演をいただき、その後、阪神大震災の記録映画を皆さんと見まして、防災に対し一層理解を深めたいと思います。

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☆ 毎年、都に災害対策を要請

 振り返りますと、東腎協では結成間もなくから、東京都の各局と「予算要請行動」という話し合いを続けておりますが、その中でも一貫して「災害対策をお願いします」と要望し続けています。
 初めの頃はどの局に行っても、私達の行動は理解されず、「あなたたち透析患者のことばかり考えて災害対策を立てるわけにはいかない」と冷たい返事で、「災害の時は皆が困るんだから、一般対策で手一杯だ」といわれました。更に、消防庁、警視庁にもお願いに行きましたが具体的回答を得られない状態が続きました。

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☆ 東京都腎不全対策協議会設立

 しかし、毎年毎年要望書を出しながら、「私たちの透析は、災害時でも命を守るにはどうしても必要なんだ」ということが徐々に理解されるようになりまして、特に、今日、講演していただきます衛生局のご尽力によりまして、「東京都腎不全対協議会」という組織が誕生し、その中で「災害時の透析医療について」の検討が進められ、平成七年1月10日に「災害時救急透析医療システム検討部会」が出来まして、各都内の透析施設に「透析患者及びその治療施設に関する現況調査」という調査が行われました。それをまとめたものが、今日講演いただく基礎資料になっています。
 このような報告書が出来たということは、全国の自治体の中でもあまり例がないといわれていまして、東京都が透析に対し、力を入れて下さっていることに感謝したいと思います。

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☆ 阪神大震災の恐怖

  この部会が設置されましたのが平成7年1月10日ですが、その一週間後に、あの忌まわしい阪神大震災が起きました。皆さん、まだご記憶に新しいかと存じますが、平成7年1月17日、火曜日、午前5時46分に発生したといわれています。来週の火曜日が17日ですから、ちょうど2年5ヶ月前になります。 あの時、神戸の人達は死にもの狂いで透析に通ったと報告されています。私達は日常、透析が出来ないと危機感を持ったことはありませんが、透析が出来なければ身の危険にさらされてしまう実感を、神戸の人達はイヤというほど経験させられたと報告書は述べています。特に、最近兵庫県で出された体験集を読みますと、交通、通信網の混乱で、病院と連絡が出来ない、電話もつながらないということが、如何に不安を感じる、心細く感じるかご理解いただけるでしょう。
 何とか病院に行かなきゃならないと、歩く人、車椅子の人、何とか電車の通っている所へ出る、ある人は10時間近く掛かって、大阪の透析施設にたどり着いたと報告されています。また、陸ではダメだと漁船で堺に渡った方、あるいは自衛隊のジープ、ヘリコプターで透析施設に送られた人など、まず第一に、何処でも良いから透析を受けたい、死に物狂いで透析を受けた実体が体験記に書かれています。中には、病院からの連絡を七日間も待ったという信じられないような話も載っていました。
 また、やっと病院に辿り着いたら、病院がなくなっていて透析が出来なかった方、やっと着いてもカリメイトを持たされて自宅待機をさせられた人、これらの話を聞いただけでも、非常に切ない話です。自分の身に降りかかっていなくても、このような実体を聞きながら、災害にどう立ち向かって行くかを日頃から考えておく必要があると思います。こういう中で被災地、被災地でないを問わず、神戸の透析施設のスタッフの方は不眠不休で機械を回し続けた。透析患者の皆さんは、医療スタッフの努力に感謝をしているということも書かれています。
 震災直後、自分の施設で透析が出来す、他の施設で透析をした人が、約八百人いるといわれています。また、ある人はこのような体験で「我々は透析スタッフの努力によって生かされていることを実感した」と書いている患者もいます。「普段は、自分一人で生きている、多少傲慢なところがあったかもしれないが、透析スタッフのお陰で生きることが出来るのだとヒシヒシと感じて、日頃から謙虚に生きなければいけないと感じた」ということです。☆日頃から十分に備える とかく、日本人は熱しやすく、冷めやすいといわれ、私もそうかもしれません。大変な時は「大変だ、大変だ」と大騒ぎをして、喉元過ぎればなんとやらで、もう関係ないということになるのですが、もし、阪神大地震が東京で起きたらどうなるだろう。東京にはビル内の透析施設が多いし、高齢者の方も一杯います。従って、もし自分の所で起きたらどうなるんだろう、ということも是非この機会に考えていただきたいと思います。
 阪神大震災から二年半も経ちますと意識も薄れてくるかも知れませんが、まだ仮設住宅に住んでる方もいらっしゃいますし、神戸の腎友会の皆さんは、辛く、厳しい体験をしているのですから、この貴重な経験を生かして、是非日頃からの備えを十分にしていただき災害に対しての心構えをしていただかなければならないと思います。
 そういう意味から本日は皆さんと一緒に災害対策について是非考えてみたいと思いますので、最後まで皆さんのご協力を宜しくお願いしたいと思います。ちょっと長くなりましたが、挨拶に換えさせていただきます。どうもありがとうございます。

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(司会)  ありがとうございました。只今、会長の話にもありましたように、透析という一疾病を対象に都がいろいろとお考えいただいていることは、最大のご配慮をいただいている訳で、我々がそれにお答えしていくのは当然のことであります。 
 つぎに、来賓の方のご挨拶をお願いしたいと思います。日頃大変お世話になっております、東京都衛生局技監でいらっしゃいます、林さまにお願いいたします」

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(来賓挨拶) 東京都衛生局 林 泰史技監

写真:林 泰史 技監

 只今、ご紹介いただきました、東京都衛生局技監の林でございます。
 本日は、東腎協結成25周年記念大会が開催されましたこと、心よりお喜び申し上げます。また、本日この大会にお招きいただきましたことに感謝申し上げます。
 腎不全に対する医療は着実に進歩してきておりますが、腎不全発生のメカニズムや治療方法につきましては、まだ本質的な解決には至っておりません。一方、透析機器の改良や治療技術の向上は目覚ましいものがありまして、これにより、治療成績も著しく改善されまして、患者さんの負担もかなり少なくなっていると思います。
 ここに至るまでには、ご列席の皆さま方やご家族の皆さま方の並々ならぬご苦労があったものと推察いたします。

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☆ 25年間の東腎協活動に敬意を表する

 会の皆さま方に於かれましては昭和47年に東腎協を結成されまして、25年間にわたり、会員相互の交流をはかられると共に腎臓に関する正しい知識の普及や福祉の推進、腎不全対策の確立に日頃から並々ならぬご努力を傾けてこられましたことに心から敬意を表するものでございます。
 現在、都内に腎不全患者さんはおよそ15000人おられます。
 今日、慢性腎不全に対する根治療法として、腎移植が医学的にも方法が十分確立しておりますけれども、腎臓の提供者はまだまだ少なく、移植希望者に十分答えられておりません。また、糖尿病が原因で腎不全になる方々が増えてきつつありますけれども、これも懸念されているところでございます。これらの腎不全に対する行政施策として、東京都では、腎疾患の早期発見をはかるための検診や人工透析を必要とする腎不全患者さんの医療費、公費負担、並びに、腎臓移植希望者に対する組織、適合性の検査費の助成を行っているところでございます。

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☆ 東京都は災害時の透析マニュアルを作成中

 秋には、腎臓移植推進キャンペーンも行い、都民への普及啓発をはかつて参ります。また、先程、糸賀会長がふれられましたように、この三月には東京都は「災害時に於ける透析医療の確保について」と題して東京都腎不全対策協議会からの報告書をいただきました。この報告の内容は、阪神淡路大震災のような大災害が発生した場合に於いても、透析患者さんが出来るだけ速やかに、透析医療を受けられることを基本といたしまして、協議会が意見をまとめたものでございます。
 今年度は、この報告を受けまして、早急に透析医療機関の災害時の対応や、透析患者さんの災害時に取るべき行動などのマニュアルを作成するほか、都としても災害時に透析が出来るか出来ないかの可否の情報の収集や提供を行いまして、透析医療の確保に努めると共に、人工透析医療機関名簿を作成して、災害時には医療機関に協力を求めていきます。今後とも、東京都では腎不全対策の一層の充実に努めていく所存でございますが、皆さまがたのご支援とお力添えがなければこれを推進することはできません。是非今後共よろしくお願い申しあげます。終わりに東京都腎臓病患者連絡協議会の益々のご発展と、ご列席の皆さま方のご健勝、ご活躍を心から祈念いたしましてお祝いの言葉とさせていただきます。(拍手)

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