リレー・エッセイ 140

ずっと夢のひとつだった海外旅行

東腎協常任幹事(阿佐ヶ谷すずき腎友会)
生 井 克 子


 全腎協が30年を迎えた今年、私は透析27年目に入りました。
大会の記念講演で、昔の透析機械を見た時、導入の頃に何度か使ったことを思い出しました。

 四角い大きな水槽(タンク)の真ん中に回路がぐるぐると巻いてあるもので、透析の間中ばちゃばちゃと水の音がしていたように思います。朝だけ受けていた透析も夜間が始まり、高校にもなんとか通学でき、無事卒業することが出来ました。
制服のまま学校を早退して通院していたので、補導員にしばしば声をかけられたり、いやな思いをしたことも、今はいい思い出になっています。

 去年久しぶりに高校のクラス会がありました。
当時の写真と見比べてあまりの変わりように、目がテンになったり、なられたりでした。
故郷に帰っている担任の先生にも「こんなに元気にしている姿を見て安心したし、こうしてまた会えるとは思っても見なかったことだ」としみじみ言われました。
本当は合併症がいろいろ出てますけれど、今こうして元気でいられることに感謝です。

 一度は行ってみたいと思っていた海外旅行はずっと夢のひとつでした。
今のクリニックは年一回のツアーが計画されて、かないそうもなかった夢がかなった夢になりました。
シンガポール、ハワイと二度も海外旅行へ参加することが出来ました。かなう夢もあるのだと思うと、たくさん持っていなきゃという気になります。

 海外での透析は、不安なところもありましたけれど、いつもお世話になっている病院の院長先生はじめ、スタッフの方々と一緒なので安心して受けることが出来ました。ただ私はいつも低血圧なので、透析中何度も顔を見に来たり、声をかけて下さったのが印象的でした。

 ホテルから一人で外へ出ての買い物はとても楽しい冒険でした。
はじめて買ったのはパンで、しゃべらなくても買えるからでした。迷わないようにと、ドキドキしながら今来た道をホテルまで戻り、次はどこまで行こうかと、パンを食べながら考えました。
素晴らしい夕日や、満天の星空を見るたび、あらためて「日本じゃない所に来ているんだな」と感じました。

 体力、おこずかい、時間のある限り、このツアーに参加したいと思っています。今年は体力と財力が足りなく留守番です。修学旅行にも行かれなかった私が、病院内のツアーに今は一人でも参加できるのですから、驚きです。
 これからも許される中で、人生を楽しみたいと思います。

 私は長い間、個人会員でしたけれど、病院での腎友会が設立されたのと同時に常任幹事になりました。
何もわからないまま今に至っていますけれど、今までの30年と同じように、これから先も安心して透析が受けられるようにするために、自分に出来ることをひとつでも多く見つけていきたいと思います。

 

東腎協  2001年10月25日 No.140

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最終更新日時:2001年11月12日
作成:ATARI